こんにちは!なんぺです。
PADM遠位型ミオパチー患者会が作成した遠位型ミオパチー ガイドブックをもとに、この病気について紹介していきます。
今回は「三好型遠位型筋ジストロフィー」についてお伝えします!
遠位型ミオパチーは病気の症状や原因によって、細かく種類が分かれています。
日本に多いのはこの3つ
- 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー
- 三好型遠位型筋ジストロフィー
- 眼咽頭遠位型ミオパチー
三好型遠位型筋ジストロフィーはジスフェルリン異常症(ジスフェルリノパチー)
筋ジストロフィーとミオパチーの違い
三好型(みよしがた) 遠位型(えんいがた)筋ジストロフィーには、複数の呼び方があります。
- 三好型遠位型筋ジストロフィー
- 三好型筋ジストロフィー
- 三好型遠位型ミオパチー
- 三好型ミオパチー
患者同士ではいまも三好型って略してるなぁ
だけどミオパチー?筋ジストロフィー?違う病気じゃないの?
その壊れ方を顕微鏡で見たときに、筋の細胞の死にかけている様子(壊死といいます)や、そのあとに続く再生の所見が盛んに見られる病気があります。これを筋ジストロフィーといいます。一方、これらの再生や壊死があまり見られない筋の病気もあり、これを筋ジストロフィーに対しミオパチーと呼びます。
三好型遠位型筋ジストロフィーは遠位筋から症状が出始める筋ジストロフィーなんじゃ
原因遺伝子でひとつの病気「ジスフェルリノパチー」と見る動き
三好型遠位型筋ジストロフィーはジスフェルリン遺伝子の変異が原因と分かっているぞ
ジスフェルリン遺伝子が原因の筋疾患ってほかにもあるよね?
⇒下腿後面(ふくらはぎ)が強く侵される
⇒近位筋(体幹)が強く侵される
⇒下腿全面(すね)が強く侵される
これらのジスフェルリン遺伝子に変異がある筋疾患をまとめて、ジスフェルリン異常症(ジスフェルリノパチー)として1つの病気とみる動きがあります。
三好型遠位型筋ジストロフィーってどんな病気?
患者数はたったの400名
筋肉の病気を発症するというだけでもとても稀なことです。
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者数はわずか400名。
ほかの筋疾患と比べても桁違いに少ない病気です。
GNEミオパチーと同じくらい
発症年齢は20代〜30代
三好型遠位型筋ジストロフィーは20代~30代で発症することが多いです。
とはいえ10代後半から発症する人もいるよ
ジスフェルリン遺伝子の変異が原因
三好型遠位型筋ジストロフィーは常染色体劣性遺伝です。
父親と母親それぞれから遺伝するジスフェルリン遺伝子の両方に変異があると発症します。
両親ともにジスフェルリン遺伝子に変異があると、子供が発症するのは1/4の確率
どちらか片方のジスフェルリン遺伝子に変異があったとしても、発症はしないよ
運動をしたり、普段しない動作をしたりすると、筋細胞に大きな負荷がかかり細胞膜が壊れます。
筋肉痛になるよね
ジスフェルリンの役割は破れた筋肉の細胞膜を治すこと。
だからジスフェルリン遺伝子に変異があると、筋肉をうまく修復しにくくなるのです。
三好型遠位型筋ジストロフィーの症状
最初の異変はつま先立ちができない
最初は下肢の筋力の低下で気づきます。
特徴はふくらはぎの筋肉が落ちていくこと
ふくらはぎはつま先立ちをするのに必要な筋力です。
だから発症してすぐの頃からつま先立ちがしにくくなります。
十数年で車いすに
病気が進行していくと低下する筋力の範囲も広がっていきます。
そして、平均十数年で車いすが必要になります。
GNEミオパチー(空胞型)と比べると進行はゆっくりめ
血液からの遺伝子検査で診断可能
診断までに行う検査
これまで筋肉の病気が疑われる場合、以下のような検査が行われてきました。
- 血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)値を調べる(通常(基準値50-250IU/L)より高い数値)
- 心電図
- 肺活量
- CT検査
- MRI検査
- 骨密度検査
- 針筋電図(細い針を筋肉に刺して電流を流して行う検査。痛い)
- 筋生検(筋肉を切り出して顕微鏡で観察する検査)
血液検査で肝機能障害を疑われた例もある
筋生検
筋生検で三好型遠位型筋ジストロフィーと診断されるには条件がある
- 筋ジストロフィーの特徴(筋細胞の壊死と再生)があること
- ジスフェルリンの抗体で染めるとジスフェルリンタンパクがないこと(陰性)
遺伝子検査
いまは遺伝子検査もできるぞ
遺伝子検査でも診断が可能です。ただ、遺伝子が大きいので、検査には時間がかかります。
ナンセンス変異があるか調べてみよう
治療法はいまだナシ
現在、病気を治したり進行を遅らせる薬はありません
研究は続いておる
リードスルー薬
DNAはタンパク質の設計図です。
三好型遠位型筋ジストロフィー患者のDNAはジスフェルリン遺伝子に変異があります。
そのうちのナンセンス変異ではジスフェルリンタンパクを作る設計図にエラーが起きている状態です。
そのためジスフェルリンタンパクがうまく作られにくくなります(=筋細胞膜の修復がしにくい)。
この設計図のエラー部分を読み飛ばすリードスルー薬の研究が行われています。
エラーを無視して読み飛ばすと、正常に近いジスフェルリンタンパクが作られます。
ジスフェルリン遺伝子に変異がある患者の約35%にナンセンス変異がある
リードスルー薬「Ataluren」は、治験に向けて準備していた製薬会社の日本法人が、2017年12月、日本から撤退することになりました。米国本社では開発が続けられています。
少しでも早く製薬化されるのを祈るばかり
未来の治療法
- 遺伝子治療
アデノ随伴ウイルスベクターに患者に足りていないジスフェルリン遺伝子を組み込み補充する方法
点滴で投与すると筋機能の改善などよい結果が出ているようじゃ
- iPS細胞
サテライト細胞を用いた移植治療法
※現在、デュシェンヌ型筋ジストロフィーで研究中
サテライト細胞と呼ばれる高い筋肉再生能力を持つ細胞をiPS 細胞からつくりだし、それをバラバラの状態で筋肉に注射することで、患者さんの筋肉内で再生を起こし正常な筋肉を再構築するという方法です。
サテライト細胞は、元々ある患者さんの損傷した筋肉にくっついて取り込まれることで、筋肉の内部から新しい筋線維をつくりだします。
患者由来iPS細胞での病態研究と創薬への応用
患者の筋肉からiPS細胞を作り、病気を再現した筋肉細胞を作る
↓
「壊れた細胞膜が再生しにくいこと」を止める化合物を探す
↓
治療薬の開発へ
ほかの筋疾患で成功したら、遠位型ミオパチーへの応用が期待できるぞ!
まとめ
三好型遠位型筋ジストロフィーについて、簡単にまとめてみました。
医師による詳しい情報はこちらからどうぞ!
もしも記載内容に間違いがありましたら、コメント欄かお問い合わせフォームからご連絡ください!
コメント