遠位型ミオパチーという進行性の筋疾患を発症して約22年が経ちました。
病気が進行し、ヘルパーさんにお世話になるようになって早16年。本当にたくさんの方々に介助・介護をしてもらいながら、何とか生活をしています。
当初、ヘルパーさんや介護福祉士さんと聞くと、
と思っていました。
ですが、わたしの病気は進行性の筋疾患。筋疾患患者の介護経験がなければ、ヘルパーさんにとっても初めてのことばかり。どうしたら良いのかわからないと言う方がいたり、何に注意して欲しいか理解してもらいにくかったり…
こんな方に朗報です!
『進行性筋疾患患者の介助・介護に関するニーズと対応〜主な症状が手足の筋力低下の場合〜』が取りまとめられました。
遠位型ミオパチー患者の介助・介護に関するニーズ調査
NPO法人ASridとNPO法人PADM(遠位型ミオパチー患者会)が共同で行ってきた「遠位型ミオパチー患者の介助・介護に関するニーズ調査」。
わたしもアンケートに答えました!
これをもとに『進行性筋疾患患者の介助・介護のニーズと対応〜主な症状が手足の筋力低下の場合〜』が作られました。
遠位型ミオパチー患者のニーズが実例とともにまとまっています。もちろん遠位型ミオパチーに限らず、進行性の筋疾患の方ならば共通する点も多々あるでしょう。
ヘルパーさんやご家族に配布して介護の参考にしてもらったり、介助方法を考えてもらったりするきっかけになるといいなと思います。
アンケート調査結果のより詳しい内容は、『遠位型ミオパチー ガイドブック』p.39~41をチェック!
ニーズ1.姿勢のコントロールと細かい調整
リフトのスリングシート(吊り具)を背中に入れるとき、着替えで服の背中側を下ろすとき、入浴前に服を脱がしてもらうとき…などに体を前に倒してもらいます。
その際、太ももの上にある自分の手が押さえつけられ、爪が刺さり傷だらけになることが。また、右手と左手が重なった状態で体を倒すと指に爪が刺さってしまうこともあります。
いずれも爪切り直後が危険です。やすりがけもしてもらったはずが、まだギザギザが残っていることが多いです。
急に体に触れられると本当に危険です。
特に頭!背後から触られると頭ガクッと前に落ちたり、前からでも不意打ちだと後ろにグキッと倒れることがあります。
何が問題かというと、目には見えないけれど首・肩・背中、あんまりひどいと腰まで痛みが出てしまうのです。
触れる前に一言かけてくれると、顎を引いて頭が倒れないように準備したり、体に力を入れたりして怪我をしないよう自分でも対策がとれます。
特に首の筋力が落ちてから、体に触れてもらうことに注意が必要になりました。
ニーズ2.疾患や患者の意思・嗜好の理解・確認
筋疾患だけでなく車椅子あるあるなのですが、介助者と一緒に出かけるとお店の方が常に介助者に向かって話したり、説明したりすることが多くあります。たとえ話しかけたのが私からであってもです。
これは介護にも言えることです。
遠位型ミオパチーは認知機能に問題はなく、意思決定も普通におしゃべりもできます。それでも、サービスを受ける私本人でなく県外の家族に連絡をとる事業所があり、とても窮屈な思いをしたことがあります。
サービスに入るなかでのヘルパーさんの要望は直接言ってくれたらいいのに…
こんな重たい内容でなくても、介助のこと、物の配置、家事の仕方…こんな感じでいいだろうと決めてしまわず、意思や希望を確認してもらえると嬉しいです。
遠慮して言えなくなることもあったりして。
ずいぶんと昔、骨折して入院することがありました。その際、看護助手さんに言われたのが、
「あなたの病気(遠位型ミオパチー)は、すぐさま命に関わらないみたいだからよかったわね〜!」
あのときはうまく言葉にできないモヤモヤがありました。
もちろん励まそうとしてくれたことはわかっています。
明るく元気にしていても、筋力低下は止められずできないことが増えていく毎日。そんな体で生きないといけない。くじけそうになる日も、心新たに頑張ろうと思う日もあります。なんだかずっと修行をしているような気分です。
「いつもはできるのに何故今日はできないの?怠けているの?」と思われる介助者の方もいらっしゃるかもしれません。
でも、その日の体調、睡眠不足、首・肩・頭の痛め具合、その日の気温や手先の冷えなどでずいぶん動きやすさが変わります。
私だけかもしれませんが、生理前はいつもより体に力が入りにくいです。
また、座る位置がちょっと浅いだけ、ちょっとねじれて座っているだけでも身動きが取りにくくるんです。車椅子のシーティングはとても大事な要素です。
浅座りだと体が後ろにそって起き上がりにくい…
これだけでなく、筋疾患であるため、昨日はできたのに今日はできない…ということを繰り返しながら、筋力を失っていきます。
私の病気は遠位型ミオパチー。手先や足先といった体の中心から遠い場所から筋力が落ちていきます。
そのため足の指先を自力で広げてパーにできません。
このような場合、足先は丸まったままでだんだんと痛くなってしまいます。
かかとをトントンして直すこともできないし…
面倒だと思いますが注意してもらえると嬉しいです。
ニーズ3.安全な介助・介護
かなり筋力が落ちてしまった私への力加減ってなかなか難しいことだと思います。
現在、私は背もたれがないと座っていられないし、首もふとした拍子にがくっと倒れてしまったり…立つことも、手を持ち上げることも、何かをつかむこともできません。
例えば、洋服の背中を整えるときは前から肩を支えて倒してもらいます。体を起こすときは、車椅子の背もたれに背中がつき肩が広がるまで(胸を広げるように)押してもらうと頭も起こすことができます。
背中が軽くついた時点で手の力を抜くと、体が前に倒れそうになることがあります。また、勢いよく押しすぎると首が後ろに倒れることも…
ヘルパーさんが慣れるまでは「もう少し、もう少し、押してくださーい。はい!OKです」と声をかけています。
また、手を持ち上げるときはヘルパーさんが思うよりも力を抜いてもらわないと、おっとっとと体がついていってしまうことがあります。
肩が背もたれから離れないような力加減がポイント。
例とは逆に、頭が後ろに倒れた時も早めに起こして欲しいです。
自分で頭を起こせる範囲以上に顎が上がってしまうと、首もじんじんしてくるし、だんだんと唾が溜まって溺れそうになります。
後ろに倒れてリラックスしているんじゃなく、溺れそうで声が出せないのかも!
この調査結果では「ストローをコップの底から浮かす」となっていますが、私の場合はストローは持たないで欲しいです。
ストローをくわえた後は手を離してもらえると、楽に飲める位置を自分で調整できるので苦しくないです。
あくまでも私の場合です。
ニーズ4.円滑な他者とのコミュニケーション
耳元で大きな声で話されてびっくりすることがあるんです。
年齢的にまだしっかり聞こえるので、そこまで近づかず大声じゃなくて聞こえます。
特に車椅子の後ろから話しかけてくれる場合、より距離が近くなるので普通の声で話してくれると嬉しいです。
私がおばあちゃんになったときは大きめな声でお願いします!
ヘルパーさんが入退室されるとき、いつもお互いに挨拶をしています。
私の部屋は入り口ドアを背にして机がある配置。でも、車椅子に乗っていると後ろを振り向けません。大抵後ろから声をかけられることが多いです。
だけど、おふたりだけ必ず、私の顔が見える場所まで回り込んで「こんにちは」。「また次回お願いします」。と挨拶してくださいます。それに加えていつも柔和なおふたりなので、私もつられてにこっと挨拶しちゃいます。
些細なことだけど何だか嬉しい。
ヘルパーさんと信頼関係ができて、うまくコミュニケーションが取れるようになるのは良いことです。
ただし、私の目下の悩みは、
などなど…をヘルパーさんから聞かされること。
私自身の気持ちに余裕がないと、もう本当にしんどくなってしまいます。
基本はわいわい楽しくしています!
他にも、私本人に言わないで〜!内心落ち込んでいるから〜というのがこちら。
話しやすいと思ってもらえているのか、何を言っても良いと思われているのか…複雑なところです。
心の声で留めています。
ヘルパーさんともお互いに程よい距離感が大事だなと思います。
4つのニーズとQOLとの関連
こちらは『進行性筋疾患患者の介助・介護のニーズと対応〜主な症状が手足の筋力低下の場合〜』の裏面に掲載されている4つのニーズとQOLとの関連です。
QOLとはQuality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)の略で「生活の質」のこと。つまり、「充実した毎日を送り、心身が満たされた生活」であることがQOLが高いといえます。決して「ものが豊かなこと」ではありません。
筋疾患である以上、身体的QOLをよくするのはなかなか難しいことかもしれません。だけど、精神的QOLや社会的QOLは介助・介護のニーズが満たされると向上につながりやすいです。
よく生きたいですね。
まとめ:介護される側とする側で理解を深めよう
進行性筋疾患患者の介助・介護に関するニーズと対応は、その人の病気の進行具合でも変わってきます。
同じ病気でも、「私の場合」と「あなたの場合」はきっと違ってくるでしょう。
介助・介護をされる側、する側お互いにとって不幸せにならないように、こうしたニーズを理解してもらうことが大切です。
そのきっかけに『進行性筋疾患患者の介助・介護のニーズと対応〜主な症状が手足の筋力低下の場合〜』を活用してみましょう。
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